民主主義は面倒くさい


 米国大統領選の第1回テレビ討論会(9月29日)では、共和党のトランプ大統領が対立候補である民主党のバイデン候補についてこう述べています。

「バイデン候補は、200フィート(約60メートル)離れていても大きなマスクを着けている」

 トランプ大統領は、それまでもたびたび新型コロナウイルス問題をめぐってバイデン候補のマスク着用を揶揄しています。

 バイデン候補に〝マスク着用=コロナを恐れる弱虫〟というレッテルを貼ることで、〝マスクをしない自分=強いリーダー〟をアピールする戦略を実行していたのでしょう。

 その後、みずから新型コロナウイルスに感染し、選挙活動の中断を余儀なくされています。

 しかし、早期に回復したとして選挙戦に復帰しています。集会では、厳しい感染防止対策を進める民主党系知事を攻撃しています。

 ともかく、マスクをしなかったことへの反省の弁はなく集会にも相変わらずマスクをせずに登場しています。

 トランプ大統領には、〝強い男〟という自己演出への強烈なこだわりが随所に見られます。〝マッチョマン(力強く男らしい男)〟信仰の厚い米国だけに、その戦略には一定の効果があるようです。

 しかし、たとえば台風が居座る海域をわざわざ横断しようとする船長を〝強いリーダー〟とは呼ばないでしょう。

 良いリーダーとは危機を突破せざるを得ない状況に追い込まれる前にその所在を認識し、あらかじめ危機を回避するように動く人のことを言うはずです。

 強さを誇示するための無謀や無茶に付き合わされるのでは、国民もたまったものではないでしょう。

 民主主義は、ある意味で面倒くさいところがあります。国民も絶えず何が正しいかを考え、正しいことが行われているか点検する必要があるから時間もかかります。

 だからといって目の前の危機を〝強いリーダー〟に丸投げすると、それは危うい結果を招くでしょう。

 なぜなら〝強いリーダー〟に見える政治家の何割かは、ただの〝強がるリーダー〟だったりするからです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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