人類の英知が試される月探査
月面の模様を何に見立てるかは、世界各地で様々です。
たとえばアイヌの言い伝えでは、水桶と柄杓(ひしゃく)を持つ少年に見立てられています。水くみの仕事を怠けた少年が火の神に連れ去られ、お仕置きに月で立たされているというのです。
シベリアやモンゴル、北欧や北米、ポリネシアなどでも、月面の模様が水くみをする人の姿に見立てられている伝承があります。
これらは、満ち欠けを繰り返す月に生命の根源である水のイメージを重ねたものだと思われます。
21世紀、月面で水をくむ話が本当になるかもしれません。
実際、月の南極や北極には水が氷の状態で大量に眠っているといいます。水は、生活用水や水素燃料として利用できます。今後、各国が競って月の水を採掘する際のルールが必要になるかもしれません。
先ごろ、日米英など8か国の間で「アルテミス合意」が署名されています。これは、月や火星などの科学探査や資源採取をめぐる新たな国際原則だといいます。
月面の資源利用が可能になるなかで各国の衝突を回避し、民間の参入も可能にする新ルールです。
アルテミスは、日本なども参加する米国の新宇宙計画名です。
そして「アルテミス合意」は米国が主導し、データの公開など活動の透明性を求めるものとなっています。
透明性に欠ける中国の宇宙開発を牽制するもので、宇宙のルール形成に先手を打った形です。
なおアルテミスとは、アポロと双子の月の女神のことです。中国も月面探査計画に月の仙女である「嫦娥(じょうが)」の名を冠しています。
女神や仙女が月から水をくみあげるとき、不和や争いの種にしていけません。月探査では、人類の英知が試されています。
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