過剰なフードロスと土を愛する意味


 山形県の農村出身の作家、藤沢周平さんは、兼業農家についてこう書いています。

「この人たちは土地を経済効率だけではからず、土地に対する愛着を土台にして物を考えることが出来るだろう」

 今年、コロナ禍の感染を心配した多くの人が〝巣ごもり生活〟を送っていたころ、ホームセンターは多くの買い物客で賑わっていました。

 花や野菜の種、腐葉土、植木鉢などを買って庭やベランダでそれを育て、心を癒やしたいと思っている人がたくさんいたのでしょう。

 実りの秋の週末、東京郊外の田園で農作業に汗を流すのは農家の人ばかりではありません。会社員やその家族が都心を離れ、収穫を楽しんでいるのです。

 実際、大都市近郊で貸農園を営む企業は成長を続け、希望の農地が空くのを待っている人も少なくないといいます。

 ドイツでは、かつてクラインガルテンという社会運動が起こっています。政府や自治体も、都市生活者が地方で農地を借りて耕す運動を後押ししています。ロシアや英国でも、同じような動きが起こっています。

 ともかく、屋外での農作業は心身の健康に繋がります。日本で貸農園が人気なのは、都会暮らしに疲れた人が増えているためでしょう。

 そのブームに、コロナ禍が拍車をかけています。

 コロナ禍は、産業の海外依存が行き過ぎることへの警鐘も鳴らしています。

 今の過剰なフードロス状態の食生活を見直さなければ、いつか食べ物も不足する心配があります。

 だから、農への回帰は日本の食料自給に少しは貢献するかもしれません。

 それは、週末農業やベランダ栽培にも通じる気がします。

 ポストコロナの時代には、土を愛する人がもっと増えていくことでしょう。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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