〝菅流〟の息苦しい政治が始まった
「学匪(がくひ)」とは、学問や知識で民心を惑わし、社会に悪影響を及ぼす学者や学生を指しています。
日本でも、憲法学者の美濃部達吉氏が「学匪」と非難されて弾圧されています。
理由は、「統治権は国家にあり、天皇はそれを行使する国家の最高機関」とする「天皇機関説」を唱えたためです。
この美濃部氏の学説は、大正デモクラシーや政党政治の思想的基盤となっています。
だが、天皇機関説は軍国主義が台頭するなかで天皇を絶対的な主権者とする軍部と衝突しています。
その圧力で、天皇機関説は公然と否定されたのです。
美濃部氏は不敬罪で告発され、著書も発売禁止処分となっています。
今は、日本国憲法23条に「学問の自由」が明記されています。だから、戦前や戦中のような圧力や弾圧はあり得ないはずだったのですが、かつてニッポンを覆っていた空気と通底するような嫌な感じに胸がざわつく思いです。
菅首相は、政府機関「日本学術会議」が推薦した新会員候補105人のうち6人の任命を見送っています。
見送られたのは安全保障法制や特定秘密保護法、「共謀罪」法、辺野古埋め立てなど安倍晋前政権の看板政策に異を唱えた人たちです。
政府は見送りの理由を明かしませんが、官房長官として安倍前政権を支え、政策も継承するという菅首相だけに「なるほどね」と腑に落ちます。
「学匪」と呼ばんばかりに政権に批判的な学者を排除するのなら、学問の自由を踏みにじるものだと言われても仕方ないでしょう。
菅首相は、指示に従わない官僚は「異動させる」と脅しています。その人事で圧力をかける〝菅流〟が学問の世界にまでも及んできたということでしょう。
ともかく、〝菅流〟は国民に息苦しさだけを広げています。
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