学問の世界に〝沈黙〟が訪れないことを願う

 文芸春秋の編集長などを務めた池島信平さんは日米開戦の前、歴史学者の羽仁五郎さんを訪ねて破竹の進撃を始めていたドイツについてこう聞かされます。

「やがてドイツは同盟国の反抗に遇って負けますよ。必ず、ドイツは負けます。こんな国と日本が組んだら大変だ」

 池島さんは戦後、「あまりの正しい予想に敬服した」と書いています。

 マルクス主義史観だった羽仁さんは思想弾圧を受け、言論界に沈黙も訪れた時代のことです。

 戦後、羽仁さんも加わって発足した日本学術会議は「学問の自由」と「思想の自由」を掲げることになります。

 当時、どこか戦前の反省あった政府が露骨に日本学術会議の組織の人事に踏み込んだことはなかったといます。

 しかし、菅首相は今、日本学術会議の新会員候補6人の任命を拒否しています。権力と学問の関係のなかで、不安がよぎる話です。

 この件、法的にも妥当性に疑義が出ています。気に入らない人を遠ざけるのが菅首相の手法なら、それも気になります。

 とにかく、学問の世界に〝沈黙〟が訪れないことを願います。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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