郵便投票は民主主義の理念にかなっている


 19世紀半ばの米国では、忙しい農作業シーズンを終えた晩秋に農家の人たちが馬車に乗って大移動する光景が見られたといいます。

 キリスト教徒には欠かせない日曜日の礼拝を済ませ、一行が向かう先は遠方にある投票所です。その移動は、丸1日がかりの長旅だったそうです。

 投票するなり帰路を急いだのは、水曜日の市場に間に合わせるためでした。

 かなり綱渡りの大移動ですが、大統領選の投票日が「11月の第1月曜日の翌日の火曜日」と国の法律で決められたのは農家や宗教行事に支障がないよう配慮したためだといいます。

 こうした牧歌的な光景は、間もなく起きた南北戦争で一変します。

 それで、戦場で戦う100万の兵士の投票権を確保するために郵便投票が導入されています。大統領選では戦地に大量の投票用紙が送られ、集票所が各地に建設されたといいます。

 それから1世紀半を経て、コロナ禍との戦いに苦戦する米国に郵便投票問題が持ち上がっています。

 トランプ大統領は共和党全国大会で、民主党が郵便投票での「投票詐欺」を企てていると主張しています。投票用紙が、勝手な記入など不正利用されると疑っているのです。

 郵便投票では普段は投票所に足を運ばない貧困層の黒人などの票が増え、民主党に有利になるからだと主張しています。

 ただ、郵便投票が多くの有権者の声を吸い上げることができるなら民主主義の理念には叶っていると言えるでしょう。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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