金魚すくいの光景が戻る日を待ちたい


 江戸時代、中国から渡来した金魚の飼育が庶民の間に広がっています。江戸っ子は当時、ガラス製の「金魚玉」に金魚を入れてその愛らしい姿を観賞したといいます。  

 長屋住まいの貧しく狭い生活空間には、金魚はぴったりの相手だったのでしょう。  

 コロナ禍で今、その金魚を取り巻く環境が一変しているといいます。  縁日や祭礼などのイベントが軒並み中止に追い込まれ、「金魚すくい」ができなくなっているからです。  

 金魚の生産地の業者からは、悲鳴があがっています。  

 昨年、約5400万匹の金魚を出荷した奈良県大和郡山市は、3~6月の出荷が4割前後落ち込んだといいます。  

 秋以降も祭りの中止で状況は悪化しているといい、こう危ぶんでいます。

 「金魚すくい用の出荷が9割減の業者もいる」  

 同市は、金魚の売り上げが2割以上減った養殖業者に20万円を支援しています。  

 一方、金魚をめぐっては希望を抱かせる話もあります。  

 ペットショップやホームセンターで、自宅で観賞用に金魚を買い求める人が増えているというのです。  

 いわゆる、巣ごもり需要です。  

 東京・本郷の老舗卸問屋「金魚坂」によると、金魚鉢の出荷は例年より3割も増えたといいます。  同店の吉田智子社長は、期待を込めてこう語っています。 

「こんな時だからこそ、身近で手のかからない楽しみとして金魚に親しんでほしい」  

 長い年月をかけて暮らしに溶け込み、寄り添ってきた金魚です。祭りの賑わいとともに、金魚すくいの光景が戻る日を待ちたいものです。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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