〝賢い愚か者効果〟


 山火事が広がる米西海岸では、オレンジ色の靄に沈んだ街の景色がこう報じられています。 

「まるで火星のようだ」  

 折からの熱波で乾燥していたところへ落雷で火がついた山火事は、東京都の何倍もの面積を焼き尽くしても一向に収まる気配がありません。  

 しかし、現地を視察したトランプ大統領は気候変動との関連を否定し、こう放言しています。 

「直に涼しくなる」  

 これに対して、民主党のバイデン大統領候補はトランプ大統領を「気候放火犯」と非難しています。  

 米国では、2大政党の支持者の間で地球温暖化への認識がまるで違います。民主党支持者は温暖化を人為起源と考えていますが、共和党支持者はそれに懐疑的です。  

 この認識の違いが生まれる背景について、こんな分析もあります。  

 民主党支持者では知識が多いほど「地球温暖化は人間活動が原因である」という考えに賛同する人が多いが、共和党支持者では全く逆というのです。  

 人は自分の主義に近い情報を吸収する傾向があり、知識が増えると考えが極端になりがちです。  そうなると知的レベルが高いほど自分の主張と食い違う意見に反発し、相手の欠点を徹底的に探し出して批判するのです。  

 こうした現象は、〝賢い愚か者効果〟と呼ばれています。  

 パリ協定からの離脱を決めたトランプ大統領は、こう公言しています。 

「地球温暖化はでっちあげだ。中国の陰謀だ」  

 確かに、新型コロナウイルス対策でも科学軽視の振る舞いが目立ちます。たぶん、オレンジ色の靄で目の前の現実が見えなくなっているのでしょう。  

 ただ、地球温暖化を高めている企業の既得権益を守ろうとしていることは間違いありません。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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