ポンぺオ・ドクトリンは米中冷戦を招く


 米国のトルーマン米大統領は1947年、特別教書演説でこう述べています。 

「世界史の現時点では、ほとんどの国が2つの生き方のいずれかを選ばねばならない」  

 これが、米ソ冷戦の開始を告げる「トルーマン・ドクトリン」です。  

 世界を抑圧からの自由を掲げる自由主義陣営と自由を抑圧する全体主義とに2分し、後者の封じ込めを訴えたのです。  

 このイデオロギーで敵と味方を色分けする〝冷戦思考〟は、ソ連が崩壊するまで世界を支配しています。  

 半世紀以上経った先日、米国のポンペオ国務長官は中国の脅威を強調し、こう断言しています。 「自由世界は、新たな圧政に勝利しなければならない。中国共産党から我々の自由を守るのは、現代の使命である」  

 ポンペオ国務長官は、この演説で「全体主義」や「共産主義」へのイデオロギー批判をふんだんに散りばめています。  

 中国に対する自由世界の新たな同盟構築を呼びかけ、国連など国際的枠組みの活用も訴えています。  

 これまでトランプ政権は同盟国や国際機関による多国間協調に背を向けてきましたが、 いきなり冷戦初期へと〝先祖返り〟をしたということでしょう。  

 米中の領事館閉鎖の応酬もあり、世界はいよいよ〝新冷戦開始〟かと身構えたのも無理はありません。 〝ポンペオ・ドクトリン〟は、トランプ政権にとって11月の大統領選を前に国内の失政も隠せるものです。  

 仮にトランプ大統領が選挙に負けても、米国の対中強硬姿勢が緩むとも思えません。ただ、戦争は嫌ですから、経済や軍事での優位性が揺らいでいる米国が踏み切った〝冷戦復活〟のイデオロギーが不測の事態を招かないことを願います。   

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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