若者は「2人零和有限確定完全情報ゲーム」に夢中


 耳慣れない「2人零和有限確定完全情報ゲーム」という言葉は、2人が対局する将棋や囲碁などを指すゲーム理論の用語です。  

 零和とは、相手の損がその分自分の得になるという「ゼロサムゲーム」のことです。  

 将棋や囲碁の勝負は有限の手数で終わり、サイコロで決めるような偶然の要素はありません。  

 完全情報とは手札を隠すようなことがなく、情報は盤上にすべて公開されているという意味です。つまり、すべてがオープンで徹底的に理詰めのゲームということです。  

 先日、将棋名人戦の7番勝負を制した渡辺明新名人は、いわゆるゲン(縁起)をかつがないといいます。要するに、理にかなっていないことが好きではないのです。 

「気合」「調子」といった言葉も嫌いで、「運は実力、勘も努力で磨かれる」とも公言しています。  史上4人目の中学生棋士で、20歳での竜王戴の獲得以来、無冠になったことがありません。  

 そんな実力トップ級の「魔王」が、36歳にして初めて名人位を射止めています。  

 2年前に名人戦順位戦のB級1組に落ちた後、破竹のV字回復で一挙に頂点を極めたということです。  

 自身はアナログ、デジタル両世代の狭間にいると言っていますが、将棋ソフトを利用する理詰めの現代将棋の変化に適応できたのは自分の性格ゆえと分析しています。  

 その性格とは、妻めぐみさんの漫画「将棋の渡辺くん」が明かす「理詰め」を突き抜けた〝面白キャラ〟といいます。  

 新名人は、「二人零和有限確定完全情報ゲーム」を人間力で盛り上げる人物でしょう。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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