栄光の座は無常
シェークスピアの戯曲「マクベス」では、幕開けとともに登場する魔女たちがこう唱えます。
「綺麗は汚い、汚いは綺麗」
この有名なセリフは、さまざまな意味に読み取れます。たとえば王となるマクベスの血塗られた栄光への出発と、悲劇的な転落への予言のようにも思えます。
栄光と転落の王の物語は舞台上だけではなく、中世の王様だけでもないようです。スペインで、前国王フアン・カルロス1世が国外に亡命したといいます。
82歳の亡命で、一時は最も国民に愛されている王と讃えられたカルロス1世には国外から巨額の資金を受け取っていたという〝汚職疑惑〟が浮上していたといいます。
波乱に富んだ半生で、一族の亡命先のローマで生まれています。独裁者フランコの時代、10歳で〝人質〟のようにスペインに送られています。
フランコの将来の〝駒〟とも言われていましたが、王になると民主主義の擁護者として振舞います。命がけで、軍部のクーデターの阻止にも動いたといいます。
綺麗に見えた民主主義の〝守護神〟に金銭疑惑など汚い話が相次ぐのは、10年近く前にスペインが経済危機に見舞われたころからでした。
そんな状況で、カルロス1世は国民から厳しい目が向けられて退位しています。
栄光の座の無常を思わせる晩年で、終わり良ければすべて良しとはなりそうもないようです。
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