藤井新棋聖を待ち受けるタフな生活


 高校生の藤井聡太七段が棋聖戦第4局で渡辺明棋聖を破り、史上最年少のタイトル保持者となりました。なお渡辺さんも中学生でプロ棋士になった先輩で、今は棋王と王将位も持つ実力トップ棋士です。  

 藤井新棋聖は第2局の中盤、金を盤中央の攻めに用いた妙手が人工知能(AI)をも超えたと棋界を騒然とさせています。  

 コロナ禍で対局のない50日間、巣ごもりで自らの将棋を振り返っていたといいます。授かった時間を「自分」の充実に注ぎ、「模索の時代」を一気に踏破した新棋聖の目にはすでに次の高峰が映っているでしょう。  

 同じ棋士の羽生善治九段の著書「直感力」を読むと、中学3年でプロ棋士になるとその所作があれこれ取り沙汰されたといいます。  

 代表的なのが、眼鏡の奥から対戦相手をにらむような鋭い視線を放つ「羽生にらみ」です。棋士のなかには、これが「失礼だ」という先輩もいたそうです。  

 著書に書かれた当人の話によると、棋士になって1年を経たころから対局数が増えて心身ともにクタクタになり、神経質になっていたといいます。  

 対局前に相手の指し手についてあれこれ考え、不安になって〝羽生にらみ〟をするのもその表れだったのかもしれません。  

 相手にとらわれるより「自分」の作戦や型を充実させようと吹っ切れたのは、20歳を過ぎてからのことだったと告白しています。  

 藤井新棋聖も、これから心身ともにタフな生活が待っているでしょう。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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