コロナ禍の今、早すぎた春の到来に溜息さえ出る


 米童話作家アーノルド・ローベルの作品「ふたりはともだち」に、カエルとガマガエルの話があります。内容は、こんな感じです。  

 雪が解け、春がやってきました。カエルはガマガエルの家へ遊びに行きますが、まだガマガエルは冬眠中でした。寝ぼけ眼のガマガエルの気分は冬眠に入った昨年11月のままで、春がきたのを信じていません。  

 一緒に遊びたいカエルは何とかガマガエルを起こそうとし、ガマガエルのカレンダーをビリビリと破ります。今は四月なのにそれも破り、ガマガエルにこう語りかけました。 

「ガマくん、ちゃんと起きて。もう5月だよ」  

 ガマガエルは起き上がり、カレンダーを見てこう言います。

 「おやおや、もう5月だ」  

 カエルの悪戯を思っても、今年の春の訪れは早過ぎます。  

 気象庁の「生物季節観測」によると、春を告げる開花や鳥の初鳴きが平年よりもかなり早い傾向にあるといいます。たとえば梅の開花では新潟市が2月2日に記録し、これは平年より41日も早いのです。  

 大分のウグイスの初鳴きは1月20日で、過去最も早かった2012年の2月1日を抜き去っています。福岡市のタンポポの初咲きは1月21日で、これも平年のカレンダーより1か月以上も早い開花です。  

 厳しい冬の後にやってくる優しく明るい季節の到来は待ち遠しいものですが、あまりに早い春には「地球温暖化」の文字も頭を過り、心躍らないまま溜息さえ出てきます。ましてやコロナ禍の今、なおさらです。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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