感染症リスクとの冷静な渡り合い


 はしか(麻疹)は、浮遊する病原体による「空気感染」で広がる感染力の強さが特徴です。過去、日本でも猛威を振るい、幕末の流行では江戸で23万人が死亡したとされていいます。当時、市中では「はしか絵」と呼ばれるさまざまの錦絵が出回っています。

 なかでも「当世雑語流行麻疹合戦記」という風刺絵は、麻疹大将が率いる「麻疹勢」と、料理屋や遊郭、屋形船、芸妓、芝居小屋、魚屋など麻疹で客が寄りつかなくなった「商売勢」との合戦の図です。  

 この絵のなかで「麻疹勢」の加勢をしているのは医者や薬種商で、その〝繁盛〟ぶりが商売上がったりの「商売勢」にはヤッカミの的となっていたようです。この絵は〝冗談〟めいたものでしょうが、疫病の危険や不安は人々に妙な倒錯や攻撃性を生み出すことがあります。  

 今回の新型肺炎は、咳などの飛沫感染か接触感染が感染経路といわれています。さらに、 飛沫より細かな浮遊物によるエーロゾル感染の可能性も指摘されています。  

 麻疹ほどは強烈な感染力がなくとも、イベントの自粛ムードが広がったのは読み切れない危険を防止するためでしょう。リスクとの冷静な渡り合いで試されるのは、やはり社会の成熟度です。 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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