コロナ過でトロッコ問題を突きつけられる医療関係者
暴走を始めたトロッコの先には、何も知らない5人の作業員が仕事をしています。線路には分岐点もありますが、分岐した線路の先にはこちらも何も知らない1人の作業員が任務に当たっています。 ただ、トロッコについている分岐器で、トロッコをそちらに向かわせることもできます。
さて、あなたならどうしますか?
この有名な「トロッコ問題」は、誰かを救うために誰かを犠牲にするとき何を基準にして判断するかを〝倫理的〟に問うものです。命を天秤にかける思考上の実験問題で、スッキリした答えが出なくても仕方がありません。
新型コロナウイルスの感染拡大が著しいイタリアでは、この「トロッコ問題」が現実のものとして突きつけられた事態が起こっています。患者が廊下にも溢れるほどになった病院で、治療に当たる医師の多くが人工呼吸器や集中治療室のベッドを誰に割り当てるのかで毎日のように悩まされたのです。
優先して助ける患者を決めることは、心情的には犠牲者を選ぶのと変わりません。選択を強いられた医師の「うちひしがれている」という言葉が、現地からの報道にありました。助かりそうな人に人工呼吸器などを回すのだと語っていますが、その見極めは難しく、心が痛み続けます。
この「トロッコ問題」は、日本でも懸念が高まっている「医療崩壊」の恐ろしさを物語る話の一つです。ニュ-ヨークなど都市部で医療をめぐる状況が悪化した米国では、医師たちが今、同じ難問に直面しています。
同じように感染拡大が懸念される日本では、追い詰められる前にトロッコを減速させて別の岐路を見つけることが望まれます。
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