詐欺行為が平気でできる別の種族

 ユダヤ人の精神医学者ヴィクトール・フランクルは、第2次世界大戦中のユダヤ人強制収容所での過酷な日々の体験をつづった「夜と霧」のなかでこう書いています。

 「この世には二つの人間の種族しかいない。まともな人間とまともではない人間」  

 ナチスのなかにも、ユダヤ人のために自腹を切って薬を買い与える者もいました。ユダヤ人のなかにも、同じ境遇に苦しむユダヤ人を苛む者もいました。  

 フランクルは極限の状況下、追い詰められた人間が善か悪かのいずれかを選ぶようになると書いています。  

 ふつう人は善と悪の心を併せ持ち、絶対的な善人も悪人もいないというのが一般的な見方でしょう。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が広がるなか、その困難に便乗した詐欺電話が相次いでいるという話を聞くとフランクルの考えに傾きたくもなります。  

 こうした詐欺師は、人が助け合うべきとき邪な企みに腐心しています。たとえば被害者に電話をかけて助成金や見舞金が出ると偽り、現金をだまし取ろうとします。なかには人の弱みに付け込み、「マスクを送付します」と気を引くケースもあるといいます。  

 世の中、そんな詐欺行為が平気でできる別の種族がいるということでしょう。

  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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