散る桜に新型コロナの拡散がだぶって見える

 「安らえ、花や」という囃子言葉は、桜に「ゆっくり咲いていなさい」と呼びかけるものです。昔は散る桜が疫病神を四方に散らせてくれると考えられ、花を鎮める「鎮花祭」の神事が各地の神社に伝わっています。  

 その起源をたどると、崇神天皇5年の「国内に疫病多く、民の死亡するもの半ば以上」という日本書紀に書かれた最初の疫病の記録へと行き着きます。古代の律令制では,鎮花祭は神祇官が行う国家的祭儀でしたから、花にかける疫病よけの願いの切実さがわかります。   

 昔の人が散る桜に不吉な連想をしたのは、暖かくなる今ごろになると疫病が流行ったからでしょう。花見の宴も自粛された今年、花びらの舞い散るままに新型コロナウイルスの感染が各地で急拡大する春を迎えています。  

 新型コロナウイルスの感染者は世界ですでに80万人を超え、死者も4万人を上回っています。これまで中国の武漢やイタリアのミラノ、米国のワシントンなど感染爆発を伝えるニュースの背景に映ってきた各地の桜でした。ただ、桜の花に罪はありません。  

 日本の首都東京も、ここにきて感染者が急増しています。実際、小池都知事が「感染爆発の重大局面」を宣言する事態を迎えています。  

 週末の外出、夜の酒場の利用など、相次いで自粛要請が繰り出されていますが、散る花びらに新型コロナの拡散がだぶって見える今日この頃です。

  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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