甲子園球児の栄光と挫折

  昨年4月、千葉県八街市の住宅に男数人が押し入り、住人にケガを負わせる事件が起きています。千葉県警佐倉署は今年1月31日までに、強盗致傷などの疑いで東京都町田市在住の無職、千丸剛容疑者(20歳)と男数人を逮捕しました。  

 千丸容疑者は、2017年の夏の甲子園で優勝した埼玉・花咲徳栄高で野球部のキャプテンを務めていました。あの夏の決勝戦の初回、小柄な2番打者の打球は空高く舞い上がり、もう少しでホームランという二塁打でした。これが好機を広げ、優勝への勢いをつけています。  

 しかし、あれから2年後、2塁打を放ったバットを持った同じ手に凶器を握って人を襲った疑いで逮捕されたのです。  

 WBA世界ミドル級王者の村田諒太選手は、高校時代の恩師にこう教えられたといいます。 

「ボクシングで勝つということは相手を踏みにじって、その上に立つということだ。だから勝った人間には責任というものが出てくる。だから、人よりも1%でも多く練習と努力をしなければならない」  

 正論を吐くなら、高校野球の球児たちの頂点に立った千丸容疑者も負けた選手や〝栄光の2塁打〟に対して責任があったはずです。関係者によると進学した大学を中退しているといいますが、たぶん何らかの〝挫折〟があったのでしょう。  

 元WBA・WBC統一世界ヘビー級チャンピオンのムハムド・アリ氏は生前、こう語っていました。 

「問題は倒れることではない。立ち上がろうとしないことだ」  

 千丸容疑者には、たとえ野球を止めたとしても甲子園の勝者にふさわしい道を歩んで欲しかったものです。そうでないと負けた選手たちは報われないでしょうし、観衆に感動を与えた〝歓喜の2塁打〟もきっと泣いていることでしょう。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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