山中は山の神が支配する聖なる異界

 その昔、東北の山中に熊を追っていたマタギ(猟師)は、山中に入ると里で暮らしていたときとはまるで違う言葉を使ったといいます。  

 そんな地域ごとに異なる「山言葉」ですが、たとえば熊は広く「イタチ」「イタズ」と呼ばれていました。逆に、「クマ」といえば鍋を表す地方もありました。熊を小動物の名で呼ぶのは、狩りやすくする呪術的心理からでしょう。  

 驚くのは、山言葉は山に入る仲間以外には家族にも秘密で、山中に入って里の言葉を使うと厳しい制裁が科せられたといいます。  

 山中は、山の神の支配する聖なる異界です。山は獲物という恵みを与えてくれますが、猟師を死に追いやることもあります。  

 ともかく山入り前は「精進潔斎」をし、山入り中はケンカや大声の会話も慎むのが掟だったといいます。

 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

0コメント

  • 1000 / 1000