運命に翻弄される就職氷河期世代
1990年代前半、企業がバブル経済の崩壊による不況で新卒採用を絞りこみ、〝就職氷河期〟という言葉が登場しました。
この言葉は、リクルートの雑誌「就職ジャーナル」(92年11月号)の「就職戦線は氷河期に突入」との特集が始まりとされています。記事の内容は、大卒女子の就職が「ドシャ降り状態」だと警告するものでした。
その後、〝就職氷河期〟は10年以上におよびました。 政府は今、この就職難を経験した世代を官民で正規雇用する取り組みを進めています。いくつかの自治体も同じ取り組みに乗り出していますが、驚くべきはその倍率です。たとえば兵庫県宝塚市は30代半ばから40代半ばの人を対象にして事務職4人を公募しましたが、1816人もが応募して倍率が400倍を超えています。
就職氷河期世代は、景気が回復してからも派遣職員など不安定な立場に置かれ続けている人が少なくありません。
「1度、波に乗れなかったら、その後も乗れません」
宝塚市の事務職に合格した人は、そう同世代の不遇を代弁しています。異常な倍率は、安定した暮らしを切望する人が多いことの表れでしょう。
政府は、この世代の正規雇用について3年間で30万人増やす目標を掲げています。その狙いは、将来の社会保障負担を少しでも軽くしたいということです。
ともかく、〝就職氷河期世代〟は不況による受難だったのに社会からは〝自己責任〟という逆風を浴び続けました。その救いとして開きかけた扉が、またも〝狭き門〟というのでは〝運命の非情さ〟を感じてしまいます。
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