フランケンシュタインの警告

 メアリー・シェリーのゴシック小説「フランケンシュタイン」は、今から200年以上も前の1818年3月、匿名で出版されました。原題は、「フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス」(Frankenstein:or The Modern Prometheus)です。   優れた知性と豊かな情感があるのに人々に疎まれて暴走する人造人間フランケンシュタインと、彼をつくり出した天才科学者の悲劇は世紀を超え、国境を越えて世界中で親しまれてきました。  

 先日、米バーモント大とタフツ大の研究者たちが世界で初めて「生きたロボット」を開発したというニュースが流れました。「ゼノボット」と名づけられたロボットは、実験動物として知られるアフリカツメガエルの幹細胞から培養した2種類の細胞を部品にして組み立てられるといいます。  

 ゼノボットの見た目はロボットらしくなく、サイズも1ミリ以下です。水中を自律的に移動できるので、医療や環境の分野で大いに役立つと期待されています。   

 ただ、自力で繁殖することはできません。エネルギーを使い切ると、活動できなくなって自然に分解するといいます。厳密な意味での〝生命〟ではないのかもしれませんが、動画を見るといかにも〝生命〟である微生物そのものです。  

 メアリー・シェリーは、再版された「フランケンシュタイン」の序文でこう書いています。

 「人が創世主のまねごとを試みれば恐ろしい結果を招く」  

 これまで数多くのSF作品で繰り返されてきた〝警告〟ですが、今や科学技術が〝神の領域〟に踏み込んだのは疑いないでしょう。 

 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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