思い込み

 さて、思い込み――。  

 映画「万引き家族」などの是枝裕和監督が、テレビのディレクター時代に手を染めた一種のやらせでの失敗談を書いています。日本の青年がカレーライスを作り、カレーの本場スリランカで現地の人に食べてもらうという内容の番組だったそうです。  

 成年の青年のカレーは2種類の市販のルーを混ぜ、牛乳を加えただけのものでした。  

 で、是枝監督はこんな展開を予想していました。スリランカ人がそのカレーの味を酷評し、挫折した青年が唐辛子農家にホームステイして本場のカレーの味に感動するといったものです。  

 しかし、実際にはそうはならなかったのです。現地の人は、青年のカレーライスに「うまい、うまい」と絶賛したのです。これでは番組にならないと、是枝監督は「まずい。こんなのはカレーじゃない」と言い直してもらったそうです。  

 要するに、日本のカレーライスは本場のカレーより味が落ちるだろうという思い込みがあったのです。それが、苦い経験生んだということです。 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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