自由・平等・友愛が薄れていく時代

 さて、パリ祭――。  

 パリ祭では、フランスで230年前、革命が始まったバスチーユ監獄襲撃の日を共和国成立の日として祝います。シャンゼリゼ大通りを軍隊がパレードし、エッフェル塔に花火が上がります。ただ、フランス本国では、単に「7月14日」と呼ばれています。  

 日本では戦前、クレール監督の同名の映画が「巴里祭」と訳され、広まりました。クレール監督には「ル・ミリオン」「自由を我等に」など、世界恐慌から第二次大戦へ向かう1930年代を風刺した名作も少なくありません。  

 映画公開時、日本の世論は5・15事件や国際連盟脱退に「よくやった」と喝采していました。世界に背を向けながら、同時に遠く「花の都パリ」を夢見ていたのです。戦後は一転、革命の標語「自由・平等・友愛」への尊敬からフランス熱が高まり、巴里祭は俳句の季語にもなっています。   

 それが冷戦終結の1989年、革命200周年を境に変わり出します。移民や宗教、経済格差などの軋轢から本家で3つの理念が揺らぎ、今やパリはテロや暴動に脅かされています。  

 自由も平等も友愛も世界中で意味が変わり価値が薄れていくかに見える時代、かつて輝いていたパリ祭という造語も魅力を失っていくのでしょう。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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