時空を超える力は侮れない

 今から50年前、立命館大の学生だった高野悦子さんが自ら命を絶ちました。没後に刊行された手記「二十歳の原点」は1970年代に広く読まれ、ロングセラーとなっています。  

 今、読み返してみると、彼女は生硬な言葉で自身を追いつめています。学生運動の渦のなかで消耗し、恋に苦しみ、救いを読書や学習に求めていました。  

 揚げ句、こう書いています。 

「私の敵は独占資本だ」 

「自らのブルジョア性に向けて叫んだ」   

 時代の残酷さを思うと彼女の切なさが胸を打ち、読者をとらえたのでしょう。   

 最近、この手記をもとにした「コミック版 二十歳の原点」が刊行されました。現代の女子大生が1969年にタイムスリップし、当時の若者たちに触発されていく内容になっています。  

 すっかり過去になった物語が、不意に甦るから不思議な感じがします。これも、時空を超える力によるものでしょう。

  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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