弱い奴ほど攻撃的になる

 さて、弱い豪物ほど相手への攻撃を抑える歯止めが効かない――。  

 動物行動学者のローレンツは、こう書いています。 

「類縁種のクジャクとシチメンチョウが争うと、ほとんど体が小さいクジャクが勝つ」  

 この戦い、戦い方の違いに驚いたシチメンチョウがサッサと地に伏せる服従のポーズをとるというのです。  

 問題は、その先です。

 シチメンチョウの間では、本能的に攻撃停止をもたらす服従の姿勢がクジャクにはわからないのです。そのためクジャクは際限もなく攻め続け、シチメンチョウはますます服従の姿勢を固めるだけです。結果は、もちろん悲惨なものです。  

 ローレンツによると、一般的に強力な牙などがある肉食獣は仲間内の争いで相手が服従の姿勢をとれば攻撃を止める本能があるといいます。理由は、そうしないと種が絶滅しかねないからです。

 これに対して、力の弱い動物ほど相手への攻撃を抑える歯止めがないのです。  

 人も後者の分類されるのですが、違うのは途方もない破壊力をもつ武器を作り出したところです。ラスベガスの銃乱射事件では、たった1人の男が600人近くを死傷させています。  

 犯人の男が手にした攻撃力と、攻撃を抑える本能のアンバランスを思い知らせる事件でした。ホテルの32階から2万人のコンサート観衆に乱射した犯行の冷酷さには、むろん言葉もありません。  男は狩猟好きで銃42丁を所持していたといいます。それは、まるで銃の力に魅入られた崇拝者のようです。  

 米史上最悪の乱射でしたが、武器と本能のアンバランスによる惨禍を防ぐのは文明の責務でしょう。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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