SNS時代、ドッペルゲンガーが偽の世論をつくり上げる
若き日の芥川龍之介が耳にした奇談を書きとめた「椒図志異(しょうずしい)」に、「影の病」という話が載っています。
ある人が自分の部屋で机に伏している自分の姿を見たが、よく顔を見ようと近寄るとそれはすぐ走り去って消えたという内容です。つまり、影の病とは自分の姿を自分で見るドッペルゲンガーのことです。
芥川は自死にいたる晩年、自分の身に起こったドッペルゲンガーについて語り、小説「歯車」では自分の分身があちこちで知人らに目撃される話を書いています。
さて、SNSで自分のアカウントやプロフィールが勝手にコピーされて有名人のフォロワーになり、自動的に「いいね」を送っているというネット時代ならではの〝ドッペルゲンガー現象〟が意図的に起こされています。
たとえば英BBCのウェブサイトによると、米国で他人の身元を盗み、SNSユーザーに大量の偽フォロワーを販売していた会社が捜査されています。偽フォロワーを買っていたのは俳優や起業家、政治評論家などの著名人たちだったといいます。
捜査対象となった企業は違法行為を否定していますが、恐るべきはSNSのフォロワー数が持つ影響力です。偽フォロワーを金で買えるなら、ドッペルゲンガーで「世論」をつくり上げることができます。
実際、米国のケースではリベラル派も右派も世論の支持を装うのに偽フォロワーを利用していたのです。
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