時勢に乗り遅れるな

 さて、天保銭――。 

 天保年間(1830~44年)に発行された天保通宝は、小判のような楕円形の穴開き銭貨です。その通称「天保銭」が生まれた時代は、飢饉に「大塩平八郎の乱」、幕府が洋学者を弾圧した「蛮社の獄」など世情が大いに乱れていました。  

 そんな閉塞感漂う社会で、大衆の支持を集めたのが講談でした。なかでも、評判を取ったのが「天保水滸伝」など侠客物だったといいます。幕府の弱体化に乗じて勢力争いを繰り広げた客たちは、新しい時代のヒーローだったのでしょう。  

 ちなみに、「天保銭」は明治の新通貨制度で8厘に換算されました。1銭に2厘足りないという理由で、時勢に乗り遅れた人を揶揄する言葉として今でも高齢者の間で使われています。

  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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