時代は前へと進んでいく
日本の人口は平成20年(2008年)にピークを迎え、その数1億2808万人は江戸時代の終わりからの人口成長期の到達点でした。人口増と工業化は経済成長の両輪をなし、日本の1人当たりGDPが世界2位にまでなったのは平成12年(2000年)でした。
この30年余りの間に、日本は知らず知らずのうちに19世紀から上り続けてきた文明の峠を越えたようです。司馬遼太郎が明治という文明の勃興期の群像を描いた「坂の上の雲」のあとがきには、こう書かれています。
「楽天家たちは……前をのみ見つめながらあるく。のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶(いちだ)の白い雲がかがやいているとすれば、それのみをみつめて坂をのぼってゆくであろう」
日本人は今、その峠の坂道を越えて先行きに戸惑っているようです。平成末の今、1人当たりGDPは世界26位に下がり、生産年齢人口は6割を下回っています。
誰もが文明の引き潮におののいた平成ですが、世論調査で「良い時代だった」と答えた人が7割を超えたのも「峠の時代」の実感なのでしょう。
見渡すと、眼下には多様性の海が広がる峠の下り道です。内外の様々な人、文化、価値が交差しあうその海に新たな文明を見いだす楽天家たちも走り始めているようです。平成の峠を越えて、時代は前へと進んでいきます。
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