街には妖怪がたくさんいる

  ソラリゼーションとは、過剰な露光にフィルムの明暗が逆転する現象のことです。  

 現代社会では、光に満ちあふれた都市にも闇は必ず存在し、百鬼夜行の妖怪もあちこちに潜んでいるはずです。    

 水木しげる氏のマンガ『ゲゲゲの鬼太郎』は、主人公の鬼太郎が正義の妖怪たちと一緒に人に悪さをする妖怪を懲らしめるといった内容です。    

 そのイメージは、テレビアニメや少年誌での連載にかぎったこと。初期の水木作品にはには、美女や金に弱いといった俗っぽい妖怪も登場しているのです。    

 水木氏の妖怪のイメージの着想は、江戸時代のいろいろな妖怪図譜を参考にしているとされています。それまで語りの中でしか存在しなかった妖怪たちは、水木氏の手によってマンガのキャラクターとして目に見える姿で登場してきたのです。

『ゲゲゲの鬼太郎』が面白いのは、妖怪たちを人間臭い存在にしたことです。

「傘化け」は自信過剰でイヤミな性格、「死神」はお人よし、「ぬらりひょん」は野球狂、「ねずみ男」は極めつきの俗人といった感じです。    

 そうしたキャラクターへの味付けが、水木作品を哲学的で妙味のあるものにしているのです。  

 私も、あなたも、みんなもスピリチュアルな感覚を求め出したのなら、ひょっとすると心の問題で何らかの妖怪化が始まっているのかもしれません。   

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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