ダンスはうまく踊れない

  女優の高樹澪さんは、テレビドラマ『スチュワーデス物語』や『ウルトラマンティガ』などにも出演していました。楽曲『ダンスはうまく踊れない』は、80万枚のヒット曲となっています。  

 ある日、彼女は女優の命ともいえる顔の半分が痙攣していることに気づきました。それを周りに気づかれないために、いつも何かを凝視するように眼を見開いて表情を作っていたといいます。  

 何の予兆もなく襲ってくる痙攣は日を追うごとに頻度を増し、やがて寝ているときでも襲ってくるようになりました。  

 この時期、彼女は結婚生活がうまくいかず、精神的にも追い詰められて心がズタズタになっていました。  

 結婚生活では我慢の連続で、夫のためにやったことが相手には可愛げなく見えたり、良かれと思ってしたことが逆効果だったりと、すべてがチグハグだったといいます。いつも夫の顔色をうかがい、感情を押し殺し、神経を尖らせて生活していました。  

 やがて映画の撮影にも支障をきたすようになり、事務所の社長に「女優の仕事を辞めさせてください」と頼みました。その電話を最後に芸能界の表舞台から姿を消すことになりました。  

 生きていくために会社の事務員やビルの清掃、飲食店のアルバイトなど、人に顔を見られずに済む職種を  06年夏、脳神経外科で診てもらったところ「片側顔面痙攣」という病名を告げられました。つまり、顔の痙攣は脳の病気が引き起こしていたのです。  

 手術は頭蓋骨を切り開くもので、死ぬ可能性もあったといいます。彼女は麻酔を受けた手術から目覚めると、朦朧とした意識の中で「助かったんだ」と感じていました。  

 手術から2日後、鏡を見ると顔が痙攣していない自分が映っていました。そのとき、まるで「旧友に再会したような気分でした」といいます。  

 彼女は病気を患って「ダンスはうまく踊れない」という状態になっても回復を諦めず、前向きに生きていこうとしていたのです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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