PTSDが「うつ病」に繋がる

 誰もが人生の真っ只中で、いきなり地獄に突き落とされることがあります。

 日本テレビの「癒し系」の花形ニュースキャスターだった丸岡いずみさんは、うつ病を発症して病院で薬を処方されています。

 うつ病を発症する契機となったのは、「東日本大震災」でした。

 報道キャスターとして凄惨な現場を飛び回るうちに、頭に発疹ができるほどの精神的なダメージを受けたのです。

 PTSD(心的外傷後ストレス障害)の予防のために事前に研修を受けていましたが、それも海上自衛隊の護衛艦に乗船して目の当たりにした「無数の水死体」という現実の前にはまたく効果がありませんでした。

 当時、こんな思いに陥っていたといいます。

「人の不幸を報道してきたことの報いで苦しんでいる」  

 そのころ仕事について自責の念があり、それがPTSDの発症に繋がったのです。

 働きながら自分で治せると考えて薬を飲まずに放置していたところ、うつ病をこじらせてしまいました。そのまま東京で仕事を続けていたら「飛び降り」「飛び込み」を実行しそうで怖かったといいます。  

 震災から約半年後、仕事を休業し、実家に戻って療養に専念することにしました。実家では自室に引きこもり、自殺まで考えていました。幻聴と幻覚に悩まされ、こう思ったこともありました。

〈母親にヒ素を盛られてしまった。このままでは殺されてしまう〉  

 うつ病は、心の風邪といわれるように投薬と休養で治療が可能とされています。

 しかし、「自殺願望」や「希死念慮」という命の危機とも常に隣り合わせです。両者の意味は似ていますが、病気や人間関係など解決しがたい問題から逃れるために死を選択しようとする心模様を「自殺願望」、これといった具体的な理由はないが漠然と死を願っている心模様を「希死念慮」と使い分けることもあります。 

 丸岡さんは最終的に入院し、強制的に薬を飲まされることで症状が快方に向かいました。夫の有村昆さんの励ましもあり、社会復帰への第一歩を踏み出せたのです。 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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