よくある「見殺し」

  大手化学メーカーの30代の社員Aさんは、社内では花形だった営業部に籍を置き、周囲からも能力があると認められていました。  

 そして、成功体験も豊富な〝やり手〟だった上司Bさんの下で働いていました。  

 Bさんは、それまで数々の新規プロジェクトを立ち上げ、成功させてきた実績がありました。Aさんの能力を見込み、自分の仕事のエリアを拡大していくという思惑もあり、Aさんに達成目標の数字を示したミッションを次々と与えていました。  

 Aさんは生まじめなところがあり、Bさんから指示されたミッションに対しえ自分の能力を超えていると思われるものでも全力で取り組んでいました。  

 そうしたミッションをこなしていくうちに、やがて実力も相応に備わっていき、それが仕事面での自信にもつながっていました。  

 ところが、ある日、大口取引先を相手に致命的な失敗をしてしまいました。契約書に記載した金額に大きな誤りがあり、その金額で取引したとすると、かなりの損害を被ってしまうことがわかったのです。  

 そのことを知って真っ青になり、急いでBさんに相談したところ、返ってきた言葉が「能なし」と人格を真っ向から否定されるものでショックを受けました。  

 ちょっとくらい庇ってもらえるかもしれないといった甘い思いは打ち砕かれ、同僚や部下のいる満座で罵られ、罵倒されました。  

 その後、Bさんから重要なプロジェクトを任されることもなくなり、職場で〝見殺し〟にされてしまったのです。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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