日本のスピリチュアルビジネスは「いいとこどり」

 占いや霊視、ヒーリングなどを利用する人は、ふつう次のようなことを期待しています。


 〇非日常な体験で特別な自分と出会った優越感

 〇特別メニューで自分の存在や人生の意味づけの発見

 〇チャネリングなどで得られる安心感、リラックス、神秘体験

 〇過去のリセットで望む自分になれるという変身願望


 スピリチュアルビジネスは、カウンセリングやセラピーだけではありません。ヒーリンググッズとしてパワーストーン、オーラソーマ、ホメオパシー、フラワーレメディ、アロマなどもあります。     遠隔ヒーリング、遠隔セラピーのサイトから配信されるエネルギー、瞑想を支援するウェブヒーリング、ヒーリング音楽、映像なども用意されています。

 それらの効果は、実証されているわけではありません。ただ、利用する人が満足し、癒されると効果があったと考えることもできるのです。

 たとえば証券会社勤務の30代前半の女性は数年前、病院の検査で腫瘍が見つかっています。担当医に「悪性だと思いますので、専門の病院に行ってください」と言われ、ショックを受けました。 

 その後、どうやって帰宅したのか記憶がないといいます。帰宅途中、担当医から告げられた「このガンは5年生存率が40%」という言葉が頭の中を占めていたからです。

 別の日、専門病院で受診。担当医に「たぶん良性だと思います。1週間後に検査結果が出ます」と言われました。

 その検査結果が出るまでの1週間、食事も喉を通らず、寝ていても変な夢ばかり見ていたそうです。

 1週間後、病院に検査結果を聞きに行くと、担当医から「安心してください。良性でした。しばらく様子を見ることにしましょう」と告げられました。

 その後、心のキズや不安を癒す効果があるとされているフラワーエッセンスの服用を始めました。腫瘍が小さくなってきた今でも、それを飲んでいます。

 フラワーエッセンスを飲むことで、あまり腫瘍のことを考えなくなり、他のことに目が向けられるようになりました。癒された心が安定した状態で、今までとは違った見方、考え方もできるようになったといいます。

 人は必ず死期を迎えますが、自分なりに生きる意味について考え直すきっかけになったと振り返っています。

 フィーリンググッズのフラワーレメディは、彼女にとってスピリチュアルな役割を果たしてくれたということです。

 古くから、花には人の心を癒す力があると信じられてきました。

 フラワーエッセンスを直訳すると、花の精髄。フラワーエッセンスは、花から抽出される物質を小瓶に詰めたもの。見た目はアロマオイルに似ていますが、それと違って香りはとくにありません。  

 1930年代、英国のバッチ医師は性格や感情の状態によってかかりやすい病気があることに着目。心のキズや不安を癒すことが病気の予防や治療に役立つということで、体に無害な花のエッセンスを作って系統化したものです。

 ストレスが多い現代社会で、道端でふと見かけた小さな花に心を癒されたという経験を持つ人も少なくないはず。心の安定や癒しのために、フラワーエッセンスを求める人が増えているといいます。  フラワーエッセンスは飲めば効く薬のようなものではなく、人の内面のエネルギーを呼び覚まして活性化させてくれるという類のものです。

 日本のスピリチュアルは、その大半が「スピリチュアルビジネス」というのが現状。何かと物質世界を嫌っている立場のニューエイジから「真の世界」や「本当の自分」といったものをピックアップし、うまく利用しています。

  ニューエイジが最初に唱えていたものを「いいとこ取り」して、スピリチュアルビジネスという独自の「文化」を生み出しているのです。 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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