人は簡単に悪魔になれる
サハロフ賞――。
EUの欧州議会が、人権活動などに貢献した人に贈る賞です。今年、それが過激派組織「イスラム国(IS)の性奴隷にされたイラクの少数派ヤジディ教徒の女性2人に贈られました。
その一人、ラミヤ・アジ・バシャールさん(19)が「朝日新聞」(12月13日付)のインタビューで壮絶な体験を語っています。
バシャールさんは14年夏、ISに拘束されました。高校生で、まだ16歳でした。襲われたのは故郷のイラク北部シンジャル近郊にあるコチョ。両親と12人の兄弟と暮らしていました。
逃げ遅れた村人千数百人のうち男性と高齢の女性は殺害され、その中に両親や兄たちも含まれていました。バシャールさんは拘束され、ISの本拠地であるイラク北部のモスルに送られました。
ISは、若い女性を「性奴隷」として人身売買していました。バシャールさんはISの戦闘員に4回「転売」され、その都度、暴行されたといいます。爆発物の製造を手伝わされたこともあったそうです。
地獄のような生活の中、バシャールさんを支えたのは「ISの残虐な行為をいつか世界に告発し、同じ苦しみを2度と女性や子どもたちに味わわせない」という強い思いだったといいます。
バシャールさんは何度も脱出を試みましたが、その都度、連れ戻され、ムチで打たれるなど拷問を受けたそうです。
イスラム法廷両足を切断する有罪判決が下されましたが、別の街の戦闘員がバシャールさんを「買う」と申し出たため、刑は執行されなかったといいます。
そこでも酷い目に遭い、今年4月、同じ戦闘員に拘束されていた友人2人と逃走を試みました。 一晩中歩き、地雷原に入ったことに気づかず、前を歩いていた友人2人が爆発で即死しました。後方にいたバシャールさんも意識を失っています。
幸いクルド人の支配地域だったため、病院に運ばれ、ヤジディ教徒の女性や子どもを支援する団体の手によってドイツのシュツットガルトに送られたのです。
ISの戦闘員も、同じ人間です。ただ、置かれた文化や状況によっては人は簡単に悪魔にもなれるということです。
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