エア・レイジに反映する社会的格差

  米国科学アカデミーの機関紙『Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)』誌(16年5月2日付)に、興味深い調査結果が載っていました。

  エア・レイジ――。

  飛行機の搭乗客が暴言や暴行によって、乗務員や他の乗客を威嚇すること。それが発生する理由として、機内の混雑やフライトの遅れ、座席の小型化などが挙げられています。

 カナダ、トロント大学のキャサリン・ディセレス准教授のグループは、エア・レイジの発生記録に着目して調査を開始。乗客が機内で「社会的格差」を目の当たりにすることでエア・レイジが発生しやすくなるという仮説を立て、それをデータで実証しようとしたのです。

 つまり、人は不平等を見せつけられることで乱暴な言動に駆り立てられるという仮説。乗客が搭乗する際、エコノミークラスの乗客がファーストクラスを通っていくと機内で暴力的発言や行動が増加するのではないかというものです。

  同グループは、数百万件にも上る航空会社のフライトで報告されていたエア・レイジの発生を調べています。

 調査結果によると、ファーストクラスが設けられているフライトでエア・レイジが発生した確率はそれがないフライトの3・84倍。それは、9・5時間の遅れが出たフライトでのエア・レイジの増加率とほぼ同じ数字だったといいます。  

 ちなみに乗客が直接エコノミークラスに搭乗するのではなく、航空機の前方の入口から入り、ファーストクラスを通ってエコノミークラスに移動した場合、エコノミークラスでのエア・レイジが2・18倍に増えていたそうです。

 注目すべきことは、エコノミークラスの乗客がファーストクラスを通り抜けるフライトでは、ファーストクラスでのエア・レイジが発生した確率は11・86倍も高かったということです。

 調査報告では、ファーストクラスの乗客は自分たちの客室をゾロゾロと歩いていくエコノミークラスの乗客を目の当たりにすると醜悪な言動をする傾向があると指摘されています。

  ディセレス准教授は、こう述べています。

「社会的に高い地位にある人が自分の地位を意識すると高慢な態度になり、思いやりが薄れる傾向がある」

 豊かな立場の人は、上から目線の比較によって不快な振る舞いをする場合があるということです。  やはり、あまりにも明白な不平等は暴力の原因になるのです。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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