ダイエットでニセ情報に騙されるな

 テレビや新聞、雑誌には、どこか怪しい健康本や健康食品、サプリメントの広告が氾濫しています。健康のためにAを食べろ、Bを食べろと騒々しい一方で、逆にAを食べるな、Bを食べるなといった主張もあります。

 まさに、科学的根拠に乏しいニセ情報の乱れ咲き。視聴者や読者は、いったい何を信じればいいのでしょうか?

 このところ生の野菜や果物をジュースにしたり、スムージーにしたりして飲むことが流行。健康系のサイトには酵素ジュースや酵素スムージーといったものも多く見かけ、それで「酵素ダイエット」、「酵素アンチエイジング」などが唱えられています。

 なかには何ら具体的な根拠もなく、こう謳っているものもあります。

「酵素ドリンクの持つ効果は、ダイエット効果がよく知られています。アンチエイジング効果も、見逃せない効果の一つです」

 そして、こう畳みかけるのです。

「アンチエイジング効果と聞いて、気にならない女性はいないはずです。酵素ドリンクを飲み続けることでアンチエイジング効果が得られるのなら、試してみる価値は十分あると思います」 

 本当に、そうなのでしょうか? 

 酵素に詳しい医師は、こう指摘しています。

 「酵素のサプリメントやドリンクを摂取しても、体内に吸収されるにはアミノ酸に分解されてしまいます。それで、いったん分解された酵素が体内のどこかで再び同じ酵素に合成されることはないのです」 

 それで、どこを探しても酵素の摂取によって体内のどこかで他の酵素が増えることを科学的に明確にしたデータなど見つかりません。 

 酵素の問題点は、それが老化とともに減少すること。要するに、酵素が減るから老化するのではなく、老化するから酵素が減るということ。

 したがって、残念ながら酵素をたくさん摂取してもダイエットやアンチエイジングの効果なんてあり得ないのです。

  では、なぜ多くの人がそうしたニセ情報を鵜呑みにしてしまうのでしょうか?

 それは、日ごろテレビや雑誌などメディアで流される情報を安易に受け入れる姿勢で生きているから。

 自分の頭で考えたり、疑問に思ったことを調べたり、専門家に聞いたりすることを怠っているので、そうしたニセモノ情報を簡単に信じてしまうのです。

  ビジネスは、売れれば勝ちの世界――。

 世間で酵素が話題になっていると、それに目をつけた商売人が「酵素」というキーワードを使って酵素ドリンクや酵素風呂、酵素化粧品などを売り出すのは商売として自然の流れです。

 そして商売人の逃げ口上は、いつも「効果の程度には個人差があります」というもの。

 ともかく、健康についてリテラシーがないと商売人にたやすく騙されてしまうということです。 

 ちなみにリテラシーとは、読み書き能力のこと。いろいろな情報から必要なものを取り出し、それをうまく組み合わせて活用することも意味しています。ふつう情報リテラシー、コンピューターリテラシーといった使い方をされています。

 リテラシーがないと、挑戦しようとしているダイエット法について健康のバランスを考えて取り組むことが欠かせないという冷静な判断ができません。

 むろん、適切な判断ができないと体を壊してしまう恐れもあります。

 前述の医師によると、ダイエットの基本は適度な食事制限と運動。食事制限にしても、余分なエネルギー摂取を控えて脂肪を増やさないことが大事です。

 だから、極端な食事制限はしないで必要なエネルギーはきちんと補給することがポイント。サプリメントなどでビタミンやタンパク質などを確保することを忘れてはいけません。

 ウォーキングなど有酸素運動は、体脂肪を燃焼させます。筋肉が脂肪を燃焼させるので、筋肉を鍛えることも大切になってきます。

 大事なのは「痩せたいのなら、痩せやすい体質にする」ということです。 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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