声はすれども姿は見えない


 岩手県の民謡「南部茶屋節」に、こういう一節があります。

「声はすれども姿は見えぬ 藪に鶯声ばかり」

 ウグイスは、他の鳥と違って群れをつくりません。単独で暮らすせいか警戒心が強く、林の中で潜むように生活しているといいます。

 なるほど、声はすれども姿は見えぬわけです。

 ところで、東京株式市場からは「株価3万円台回復」「30年半ぶり」といった景気の良い声が聞こえてきます。

 実際、東京株式市場で日経平均株価が3万円台を回復しています。

 バブル期の1990年以来のことらしいのですが、3万円台という「ホーホケキョ」を聞いて辺りを見回してみてもその姿は見えてきません。

 見えてくるのは、コロナ禍に喘ぐ飲食店や俯きがちな人々の姿です。

 世界的な金融緩和によって溢れた投資マネーが株式市場に流れ込み、株価を押し上げているといいます。

 しかし、肝心の所得や雇用の数値は低迷したままで景気回復を実感できません。

 まだ声が聞こえるだけでもましかもしれませんが、暮らしを楽にしてくれる本物の「春告げ鳥」にお目にかかりたいものです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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