バイデン大統領は民主主義の光明を取り戻せるか


 19世紀を生きたフランスの思想家トクビルは、建国から半世紀余りの米国を視察しています。

 当時、米国のジャクソン大統領は西部開拓地の出身で、粗野な言動も多かったといいます。米英戦争の英雄として人気が高く、東部のエリートに反発する西南部の民衆に支持されて第7代の大統領に就任しています。

 先住民を虐待し、奪った土地を開拓民に与えるといった強権手法は今でも批判の的となっています。一方で、この時期に白人男性普通選挙が各州で実施されるなど民主主義が進展したとされています。

 トクビルは、若く粗削りな国家の将来に民主主義の光明を見い出しています。それは自由、平等、分権、自治といった建国の理念を尊び、民主主義を根づかせようとした市民社会の力です。

 米国は、トクビルの予見通り民主主義大国として発展しています。

 しかし、ジャクソン大統領を信奉する第45代トランプ大統領が国民を分断し、偏見や憎しみが溢れる社会に変容しています。多くの国民が民主主義の基本である選挙を信用せず、一部は暴力で社会を変えようとしています。

 第46代バイデン大統領は、瀕死の民主主義を立て直して国民の融和を図るという重い課題を背負って政権をスタートさせています。

 ともかく、民主主義が招いた困難を克服する手段もまた民主主義です。

 トクビルは、草の根レベルの連帯や自治が結果的により良い社会に繋がると唱えています。

 バイデン新大統領は、就任演説で国民にこう訴えています。

「恐怖ではなく希望を、分断ではなく結束を、暗闇ではなく光明を」

 そう訴えたバイデン新大統領には、かつてトクビルが見た民主主義の光明を取り戻してほしいものです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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