切ない恋愛と一方的な思い込み

 宮崎市にあるフェニックス自然動物園では、池を泳いでいるコイにエサを与えるコクチョウが話題になっています。

  そのシーンを目撃した入園者から、こう称賛の声が上がっているといいます。

「なんと優しいコクチョウなんだろう」

 同園で飼われているコクチョウとコイは10年以上、動物園の敷地内で同居。コクチョウが嘴(くちばし)でつまんだエサを水面に近づけると、コイが口を大きく開けて続々と集まってくるそうです。

 そのシーンを目撃した見物人は、自分なりに止めどもなく想像が勝手に膨らんでいきます。

  なかには、こう想像する人もいるはずです。

  ひょっとしてコクチョウとコイには恋心、深い絆があるのかも?  

 ただ、飼育員によるとコクチョウはエサを水でふやけさせて食べる習慣があり、残念ながらコイにエサを奪われているのが真相だといいます。

  それでも、見物人には微笑ましいシーンとして映るのです。なぜなら、そのシーンを目の当たりにした見物人がそうあってほしいと願っているからです。  

 恋愛も、それと似たようなところがあります。

  切ない恋愛の当事者は、相手が自分の想像しているような人物であってほしいと勝手に期待しているところがあるのです。 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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