トランプ政権は猛毒を持った「ヒュドラ政権」だった


 多頭ヘビの神話は、古代メソポタミアの7頭ヘビ「ムシュマフ」を初めとして世界的に分布しています。

 もちろん、日本の「ヤマタノオロチ」もその一つです。

 ギリシャ神話に出てくる9頭の「ヒュドラ」は9頭がすべて毒を持っており、そのうちの一つは〝不死〟という凶暴な怪物です。残りの8頭も切られると、その傷痕から2つの新しい頭が生えてきます。

 英雄ヘラクレスは、その傷口を焼いて頭の再生を防いでいます。そして「不死」の頭は地中に埋め、大岩で封じ込めています。

 倒したヒュドラの毒を武器に利用したヘラクレスですが、結局はこの毒で自分も命を落としてしまいます。

 一方、共和党のトランプ大統領は米連邦議会の議事堂への乱入をめぐる米下院の大統領弾劾訴追決議で2度目の「弾劾訴追」を受けています。

 任期切れまで1週間での弾劾訴追も、何やら「不死」の再生を阻む大岩の封印とも見えなくもありません。

 選挙結果を認めない支持者に議会への行進を促した演説などを「反乱の扇動」とする同決議の採決では、共和党からも10人が賛成のほうに回っています。

 ことが選挙結果の暴力的転覆という〝猛毒〟では、与党議員も飲み込めないといったところでしょう。

 ただ、上院での弾劾裁判はトランプ大統領の任期満了までに開かれる見通しはありません。

 裁判開始はその退任後となりますが、民主党があくまで有罪評決を求めるのはトランプ大統領の次期大統領選への再出馬を封じるのが狙いのようです。

 つまり、トランプ大統領とその支持勢力の生命力は「ヒュドラ並み」ということでしょう。

 ともかく、トランプ政権は従来の米国の理想や民主政治の原理をあざ笑うかのような毒気を米社会に浸透させています。

 それを退治する側も米社会の分断の深化、固定化という〝中毒症状〟に飲み込まれないように願いたいものです。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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