時代に寄り添い、時代を作り上げた〝職業作家〟の見事な生涯


 先日、多くのヒット曲を世に送りだした作曲家の筒美京平さんが80歳で亡くなりました。

 筒美さんが遺した作品は、ポップスからアイドル曲や「サザエさん」まで約2600曲にも及びます。覚えやすく、垢抜けた曲調は昭和、平成のファンの耳を楽しませ、束の間の憂いを忘れさせました。

 ヒット曲の題名を眺めるだけで、当時の思い出や世相まで頭に浮かんできます。

 筒美さんは、1971年から87年にかけて実に10回に渡って作曲家別年間レコード売り上げを記録しています。

 希代のヒットメロディー作曲家で、作曲した作品の総売上枚数7560万枚は日本の歴代作曲家で最多を誇ります。

 ただ、筒美さんはメディアにも登場せずに裏方に徹し、今の音楽界の〝アーティスト〟たちとは対照的な生き方を送っています。

 筒美京平というペンネームは、平らかに響く鼓の意を込めた「鼓響平」を左右対称の漢字にしたといいます。「平らか」には、多くの人の心に響くという願いがうかがえます。

 筒美さんは、日本音楽著作権協会のインタビューで70年代の楽曲作りを〝日本歌謡会社〟と表現しています。

 みずから「職業作家」を名乗り、作詞や作曲、編曲、販売のチームワークで目標売上枚数達成へと突き進んでいます。

 時代に寄り添い、時代を作り上げた〝職業作家〟の見事な生涯でした。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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