国連の世界食糧計画(WFP)のノーベル平和賞受賞は妥当


「楠公飯(なんこうめし)」とは、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての武将、楠木正成が考案したとされる節米法です。

 戦争中、食料不足を補うため奨励されたといいます。

「楠公飯」は玄米を炒り、通常より3倍の水に一晩漬けたうえで炊き上げます。炒った玄米は水分を吸収し、1升分が3升ほどになって釜いっぱいに炊き上がるといいます。

 戦争中の暮らしを描いたアニメ「この世界の片隅に」のなかで、すずさんがつくった「楠公飯」の弁当はおいしそうに見えました。

 しかし、実際の「楠公飯」はひどい味だったといいます。

 演出家の鴨下信一さんは著書「誰も『戦後』を覚えていない」で、「楠公飯」についてこう書いています。

「どうにも苦く、一度でわが家の食卓から消えた覚えがある」

「楠公飯」は厳しい食料事情のなかでの知恵なのでしょうが、わずかにでも玄米があるから初めて使えるものです。

 それさえ、手に入らない場所には誰かが出向いて届けなければなりません。

 今年のノーベル平和賞は、その活動を行ってきた国連の世界食糧計画(WFP)に与えられます。

 WFPは飢餓や貧困など世界が抱えている問題に対し、最前線で立ち向かっています。ノーベル平和賞は、WFPの取り組みにふさわしいと言えるでしょう。

 とりわけ、今年はコロナ禍によって食料輸送が難しく、飢餓人口の増加が著しいといいます。

 WFPの青い旗には、小麦とトウモロコシを人の手が強く握りしめている図柄になっています。

 とにかく、穀物を飢えに苦しむ人に何としても手渡したいという決意がこ込められているのでしょう。  

 日本人が腹を減らしていたのも、それほど遠い昔の話ではありません。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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