Ｑアノンの陰謀論が幅を利かせるアメリカ政治

　１９９７年に公開された米映画「陰謀のセオリー」で、メル・ギブソン演じるタクシー運転手はこう述べます。 

「『完全な陰謀』は証明できない」 　

　このタクシー運転手は、いつも乗客に様々な陰謀論を語り続けています。

「ベトナム戦争はオナシスとＨ・ヒューズの賭けで始まった」 

「１００ドル札のフランクリンの肖像には追跡用チップが埋まっている」

「スペースシャトルは地震兵器だ」 　

　それが妄想あつかいされると、「『完全な陰謀』は証明できない」と言うのです。 　

　今年の米大統領選は、そんな「陰謀のセオリー」が隠れた争点となりかねません。 　

　トランプ大統領は、こう放言しています。 

「民主党のバイデン候補は〝あなたたちが聞いたこともない、暗い影に潜む人々の操り人形〟である」 　

　トランプ陣営の集会では、「Ｑアノン」と呼ばれる陰謀論を信じる信奉者がこう公言しています。 「トランプ大統領は、ワシントンの悪魔崇拝や児童売春の秘密結社と戦っている」 　

　トランプ大統領自身は「Ｑアノン」の陰謀論を着ていないと言っていますが、自分への支持者の歓迎を受け入れています。 　

　前回の大統領選では、投票日前にクリントン陣営による人身売買や性的児童虐待などの虚偽情報が流されています。 

「Ｑアノン」はその流れをくむ陰謀論で、今回も選挙戦の動向次第ではフェイクニュースの乱発などが投票行動に影響を与えかねません。 　

　トランプ大統領は、コロナ禍による郵便投票の拡大をめぐって不正投票の陰謀論を言い募っています。 　

　米国政治では、どうも署名できる真実より証明できない陰謀論のほうが幅を利かせているようです。