世の中は間違いなく〝利権〟で動いている
富士山の麓に広がる静岡県でお茶の栽培が盛んになったは、明治時代に入ってからのことです。 静岡県を流れる大井川は、江戸時代でも橋が架けられませんでした。代わりに、人による「徒(かち)渡し」が行われていました。
橋が架からなかった理由は、諸説あります。
もちろん、技術的な要因もありました。ただ、大きな理由とされているのは川越え組織の権益を保護する必要があったからというものです。
やがて渡し舟や架橋の普及にともない、大井川の川越組織を構成していた川渡しの人足たちは職を失っていきます。そんな彼らが、転職して茶畑を開墾に乗り出していったのです。
その大井川が今、世間の注目を浴びています。
リニア中央新幹線(品川―名古屋)の整備に必要な南アルプスのトンネル工事をめぐり、事業者のJR東海と静岡県が対立しているからです。
静岡県は、工事にともなう湧水で大井川の水量が減り、流域の暮らしや産業に影響しかねないと主張しています。一方、JR東海は水量は維持されると反論していますが、県は着工に同意していません。
両者の対立の背景には東海道新幹線の運行に関する両者の確執も指摘され、川勝平太静岡県知事の強硬姿勢を批判する〝静岡悪者論〟もあるようです。
ただ、これまでも大井川では発電用取水などによる水量不足が問題化していました。かつて流域では、地域住民から「水返せ運動」が起きたこともあります。
中央リニアの整備問題では実際、JRが県の求める湧水の全量回復への対応が遅れていたこともあります。
政府も巨費で支援する国策だという意識が、説明軽視につながった点は否定できないでしょう。
かように、世の中は間違いなく〝利権〟で動いているということです。
0コメント