働き方改革への道は遠い医療の世界
半世紀前、東大紛争の発端は医学部卒業生が無給で働かされる慣習への異議申し立てでした。やがて混乱は東大全体に波及し、いわゆる全共闘の学生たちと機動隊との安田講堂攻防戦に繋がっていきました。しかし、世の中はすっかり変わり、それもこれも今は昔といった感じです。
ところが、医学界の悪弊は相当しぶといもののようです。文部科学省は、先ごろ全国の大学病院で働く医師・歯科医師のなかにまったく給料をもらっていない「無給医」が2191人いるとの調査結果を公表しました。
このうち27病院の751人は、診療のローテーションに組み込まれるなど労働基準法違反の可能性が高いといいます。
この無給医問題で、文科省は当初「無給医は存在しない」と全面否定していました。しかし、いろいろ証言が出てくると姿勢を変え、今度の公表に至っています。とはいえ、調査はまだ手ぬるいようです。なぜなら無給医かどうかの判断を大学病院に任せ、その報告をまとめているからです。 つまり、今回の数字は氷山の一角かもしれないのです。
小説「白い巨塔」では、大学病院が教授を頂点に准教授、講師と連なるヒエラルキーのもとで、若手はただ耐え忍ぶのみといった世界が描かれています。東大紛争にも影響を与えたというこの小説が、なお読者の心をつかみ、何度も映像化されるのは医局の実情が昭和のままだからでしょう。 働き方改革の手前に立つ、〝古い巨塔〟の〝実像〟です。
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