イジメの構造「同心円」

 夏目漱石は小説『草枕』で、こう書いています。

 「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい」  人生は、海図のない航海のようなもの。前もって準備をしていても、自分が目指している港にスムーズにたどり着けるとはかぎりません。  

 アメリカの絵本作家ドクター・スースの絵本『きみの行く道』(河出書房新社) に、こういう言葉が載っています。

「Why fit in when you were born to stand out?」  

 日本語に訳すと、それは「際立つように生まれてきたのに、なぜ周りに合わせようとするのか?」といった意味です。  

 日本社会では、このところ学校や会社、組織などで同調圧力の空気が濃厚になってきています。  同調圧力とは、いろいろな集団において少数意見の人に対して暗黙のうちに多数意見に合わせるように強制すること。

 そのため意思決定のプロセスで、少数意見を多数意見に従わせようとする風潮が強まっています。  それに従わない人は、どうなるのでしょうか? 

 少数意見は受け入れられず、周りから「村八分」のようなあつかいを受けることもあります。要するに、同調圧力はイジメの温床。  

ジメの構造は、よく同心円にたとえられます。被害者を中心に加害者、それを囃し立てる観衆、見てみないフリをする傍観者が同心円状に取り囲み、それぞれが濃淡はあってもイジメに関与しているのです。  

 イジメは被害者を中心にして加害者やそれをはやし立てる観衆、見て見ぬフリをする傍観者が同心円状に取り囲み、それぞれがイジメに関与しています。 

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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