好事魔多し

 このところ、個性的な風合いの日本酒に注目が集まっています。

 たとえば旭酒造の純米大吟醸酒「 獺祭( だっさい) 」。

 獺祭は、1980年代には倒産寸前の危機的状況に陥っていた山口県(岩国市)の小さな蔵が生み出した日本酒。05年ごろから急激に売り上げが伸びて、その後も右肩上がりの成長を続けています。

 酒造の世界では、これまで良い酒を造るには経験を積み重ねた杜氏の知識や勘が欠かせないとされてきました。

 ところが、旭酒造には酒造りの最高責任者である杜氏がいません。常識を打ち破って、杜氏制が廃止されているのです。代わりに酒造りに適した「山田錦」という酒造好適米を使用し、徹底した数値管理が行われています。

 獺祭は一時期、人気で品薄状態でしたが、今では大きな酒屋を訪れると普通に手に入ります。理由は、新しい蔵を建て増して増産体制を整えているから。

 ただ、いつでも買えるようになると、消費者は「今すぐ買わなくても、今度、買えばいいかな」と思ってしまいます。

  一部では「勢いに陰りが出てきた」と言われていますが、それは獺祭が「いつでもどこでも飲めるお酒」として定番になりつつあるということ。

  旭酒造は進化を続け、小売り店舗「獺祭ストア」や「獺祭バー」なご様々な店舗展開をしています。世界市場への進出にも積極的で、輸出量は飛躍的に伸びています。

  獺祭は昨年4月、米国のオバマ大統領がホワイトハウスに安倍晋三首相夫妻らを招いた晩餐会で乾杯のお酒に選ばれたことでも知られています。

 ところが、好事魔多しです。

 朝日酒造は12月26日、商品に虫が混入していたとして同じ日に瓶詰めされた9312本を自主回収すると発表しました。

 混入が見つかった商品は「純米大吟醸 獺祭三割九分」(720ミリリットル)。

 12月20日、卸問屋から「虫が入っている」と指摘を受け、旭酒造の担当者が虫が入った商品1本を確認したといいます。  

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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