ハンコの押し方にも意味があった


 行政のムダ撲滅を目指す河野太郎行政改革担当相は、こう雄たけびを上げています。

「ハンコを止めろ」

 すべての中央省庁に、デジタル化推進の一環としてに原則、押印廃止を求めたのです。

 これまで行政の文書に、印鑑は付きものでした。そのハンコが廃止となれば印鑑業界は困るでしょうが、認め印で済む形式的な押印なら省いても差し支えないはずです。

 むしろ、煩雑なお役所仕事が簡素化される利点のほうが勝るでしょう。

 コロナ禍で在宅勤務の人が押印のためだけに出社するというケースも少なくなく、電子決済が普及すると、そうしたバカバカしいことも一気に減らせるはずです。

 ところで、日ごろ何げなく押していたハンコですが、その押し方に意味が込められていることもあるといいます。

 たとえば特定の業界では、「斜め押し」という慣行があったそうです。それは左から社長、部長、課長、担当と決裁印の欄が並んでいたら、課長以下はハンコを左にやや傾けて押すのです。

 理由は、みんなが社長の印にお辞儀をしているように見せるためだといいます。

 たとえ部下は回ってきた決裁文書がムチャな内容だったとしても、聞く耳を持たない上司には逆らえずに決裁印を押さねばならないこともあったでしょう。

 そんなときは、不同意の度合いに応じて「斜め押印」「横押印」「逆さ押印」を押すこともあったといいます。

 今思えば「あいつの押印は、ただの押し損ねではなかったんだ」と、冷や汗が出てきた人もいることでしょう。

八丁堀のオッサン

八丁堀に住む、ふつうのオッサン。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務のあと雑誌編集者、『月刊文芸春秋』、『週刊ポスト』記者を経て、現在jジャーナリストとして文字媒体を中心に活動。いろいろな面で同調圧力 にとらわれ、なにかと〝かぶく〟ことが少なくなっているニッポンの風潮が心配。

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